高齢犬の介護(2007年12月更新)
私たちはアニマルセラピーの現場で多くの認知症老人や身体障害者の方々と
接して来まして、介護はお手のものと感じていました。
しかし、愛犬のゴールデンレトリバーのマルス(♂)が14歳という高齢で老衰を迎えるに当たり、常に社員には褥瘡(じょくそう:床擦れ)に気をつけなさいと注意を促していましたが、介護の実際を理解し得ない若者は褥瘡を腰につくりました。
それからの看護は夜間も含め、6~8回の寝返りと、数回の治療を勤務の上に実行しています。知恵をだした宙吊りタンカを作成し立位を持たせ、腰の負担を軽減しています。マルス頑張れ!
マルスが歩いた!(2008年1月更新) 怪我の巧妙と言うべきか、マルスの状態が甚だしく改善され、数歩だが自立歩行をする様になった。これは28㎏の体重が22~23kgまで減じた事が要因で、脚力が衰退しているにも関わらず立つ事が出来たのでしょう。それからと言うもの毎日のように立とうとし、マットから外れて寝ている事も屡々(しばしば)で有る。
食欲も排便や排尿も通常で良く寝、麻袋担架に吊るしている最中でも鼾(いびき)をかいて寝てしまう。
マルスの途中経過(2008年1月更新)
マルスには4~5年前からてんかんの発作が有り、持病となっていました。薬は少な目を与え今日に至ります。薬は抗てんかん剤で極度の興奮を抑える作用が有る為に、マルスの性質は増してや大人しくなりました。そんな性質でしたので、アニマルセラピー犬として登用していました。大人しくご老人と向き合い、癒しました。マルスのおかげで安心して施設を訪問することが出来、アニマルセラピーの様々な方法を識る事になりました。
ペットとしては15年の生命は長すぎるように思いますが、その灯火は僅かと成りました。整腸剤やビタミンの効果もあるでしょう。然し、日夜の介護に勝るものは有りません。褥瘡(じょくそう)も癒え、特別食も手で与え、腹が満たされ今は静かに揺り籠で眠っています。
マルスの揺り籠(2008年4月更新) 一本吊りとは言っても、漁師が釣竿一本でカツオを何匹も釣り上げるのとは大違い。マルスの介護話の続報です。
現在のマルスは状態が安定していて、良く食べ、排泄もきちんとしています。日光浴も、のどかな春の日差しを浴びて好好爺(こうこうや)のごとく寝ています。体重は日々減じて、何時お迎えが来てもおかしくないのですが、可愛らしい縫い包みの様な体で過ごしています。
前回は担架のまま吊り下げましたが、マルスに歩きたい気持ちがあり、希望を叶えて、吊り下げる事にしました。左方向にグルグルと回るのでロープで止めてはありますが、左右にブラブラと歩を運び、良い運動になっている様です。
朝昼晩と深夜の介護は大変な仕事ですが、皆頑張ってやっています。感謝感謝感謝の気持ちをマルスに代わって伝えます。
15才7ヶ月(2008年5月更新) 1992年の10月11日にゴールデンレトリバーのマルスは産まれました。母犬はスカイ、父犬はブリーダー犬で、確か11匹兄弟でした。逆さ睫毛が有り、手術をしたので弊園に残ることになりました。性格は温しく良い犬でしたので、後にアニマルセラピーの訪問犬として愛され活躍しました。
老齢になり、改めて年を数えてみましたら15才7ヶ月という、大型犬種にしては珍しく長寿なのに驚きました。日夜、社員の介護の手でマッサージ後に寝返りを打たせ、体位を変えました。立位の担架吊りは足を踏ん張る事に依る見事な効果をみせました。餌も老犬用ドッグフード、ドッグ缶、野菜スープ、ミカンのおやつと、今は山羊乳200ccのメニューで長寿更新中です。
その後のマルス(2008年11月更新)
今年の4,5月で紹介(前述)致しました、ゴールデンレトリバーのマルスの続報です。
1992年10月11日に産まれましたマルスは16歳の誕生日を社員(飼育員)の手厚い介護の中迎えました。もうすでに立つ事は出来なくて寝たきりです。餌も食べたり食べなかったり牛乳やヨーグルト、ミカン等も与えていますが、見る見る間に痩せ細り、体重は半減し凡そ15kg位しか有りません。1日、朝7時から夜10時までの10回、吊り下げ、横臥(左右)にマッサージ、生理食塩水500mlの点滴、そして給餌をしてました。飼育の努力は並々ならぬもので、社員は一言も苦情を呈せず勤め上げていまして・・・
・・と、此処まで書いたところ、今日(11月12日)の昼食後にアルバイトの岩鍛治君が飼育に下りた所、静かに息を引き取っていたのでした。こうなるであろうと想像はしていました。全身のエネルギーを総て使い果たし、ローソクの最後の灯が消えうる様な死でした。
マルスに学びました。介護の辛さ苦しさ、手を掛ければ介護が充実する事、等々、現代の若者が薄志弱行であるとすれば、飼育や介護は成り立たないでしょう。良き飼育員に恵まれてマルスは16年と1ヶ月の良き一生を終える事が出来ました。合掌・・・