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アフリカ象のメアリー

 もう5年前の話で恐縮なのですがお目汚しに読んで下さい。

 家内と一緒に仙台で行われた学会に出掛けた時の事です。仙台には特別な想いが有り、楽しみに訪れました。それはもうニ昔半前の事です。

 私の以前の職場は宮崎サファリパークでした。縁が有り、仙台市の八木山動物園にメスのアフリカ象メアリーを嫁入りの為に搬入したのです。
 九州の宮崎県日向港から、熱帯のように暑いトラックフロアーの船倉での丸一日の航海後、東京湾川崎港に着き、一路低床トレーラーで高速道路60㎞/h(許可を取って低速移動中の看板を付けて有りました)で走行。10月の陽気は夏の宮崎から途中小雪の舞う秋の東北の気候へと変化し、随分とメアリーを心配しましたが、無事に朝未明に到着しました。
 学生の頃も徹夜をした事の無い私がいきなり60時間の勤務を余儀無くされフラフラでホテルのベッドに倒れ込み、泥の様に眠ったのでした。

 その辛い思い出が仙台への特別な思いと成り、メアリーに会いたくて八木山動物園の門を潜ったのです。
 急ぎ早足で脇目も振らず象舎に向かい再会をしました。生きたメアリーを此の目で見ました。50mも離れたメアリーは数頭の象と一緒にパドックで佇み、長い鼻で土をいじっていました。
 多勢の入園者の一人の私は、周りを気にしながら両手でラッパの様に口を囲い「メアリー」と呼びました。「メアリー」と呼んだのです。すると私の声が届いたのか、虚ろなメアリーの大きな耳が微かに反応したかの様に見え、体には不似合いな小さな目が私の姿を探しました。頭を振り、こちらを見て探しているのが分りました。20年も前に「メアリー、メアリー」と呼んでいた私の声を忘れては居なかったのです。姿を見せて鼻頭を撫でてやりたい。トランク(注※)を見せたかった。
 一入園者として訪問した私にはさしさわり思う気持ちが有り、厚かましく振舞えませんでした。20年も前の話なので。

 ふっと我に返り、横に居た家内に目を遣ると涙を流して泣いていました。(2008年6月)

     (注※) トランクとは、象に鼻を巻いて口を開けなさい、と言う指示の言葉
 

ドッグ コミュニケーション


 三重県四日市市南部丘陵公園には小動物園が有り、26種135点の飼育展示を数え、小動物園とは言えない施設です。動物はヤクシカ6頭、ミニブタ2頭、ヤギ7頭、ヒツジ5頭、マーラ2頭など、そして、クジャク、トウテンコウ、アヒル、チャボ、クジャクバト等の鳥類が飼育管理されて居ます。

 その中に、使役犬としてバーニーズマウンテンドッグ(♂)とラブラドールレトリバー(♀)の2頭が飼育係と一緒に出勤して居ます。とても人気が有って、市民の方々に可愛がられ、毎日の様に会いに来られる犬好きの方も見えます。そんな理由から、この1~2年、犬の散歩がてらに小動物園を訪れる方々が増えて参りました。南部丘陵公園は入場無料の入園施設なので、どなたでも気軽に来られます。犬仲間は勿論の事、犬好きな方は犬を仲介してお客様との会話も弾みます。ご婦人やご老人の健康増進に犬の果たす役割は大きく、研究結果でも犬を飼うご老人の自立度は高く、病気等も少ないと聞きます。

 年中無休で入園の制限も有りません。どうぞ皆さん、遠慮なくお越し下さい。そして、楽しい会話を立ち話やベンチでなさって下さい。挨拶一言でも気持ちが良いものです。

 マナーとしては予防注射済である事、病気疾気の無い事、また、犬同士の喧嘩は禁止です。フンの後始末はお忘れなく守ってください。春夏秋冬何時でも楽しめる小動物園を、どうぞご利用下さい!(2008年2月現在)

マルスの介護


高齢犬の介護(2007年12月更新)

 私たちはアニマルセラピーの現場で多くの認知症老人や身体障害者の方々と
接して来まして、介護はお手のものと感じていました。
 しかし、愛犬のゴールデンレトリバーのマルス(♂)が14歳という高齢で老衰を迎えるに当たり、常に社員には褥瘡(じょくそう:床擦れ)に気をつけなさいと注意を促していましたが、介護の実際を理解し得ない若者は褥瘡を腰につくりました。
 それからの看護は夜間も含め、6~8回の寝返りと、数回の治療を勤務の上に実行しています。知恵をだした宙吊りタンカを作成し立位を持たせ、腰の負担を軽減しています。マルス頑張れ!

   




マルスが歩いた!(2008年1月更新)

 怪我の巧妙と言うべきか、マルスの状態が甚だしく改善され、数歩だが自立歩行をする様になった。これは28㎏の体重が22~23kgまで減じた事が要因で、脚力が衰退しているにも関わらず立つ事が出来たのでしょう。それからと言うもの毎日のように立とうとし、マットから外れて寝ている事も屡々(しばしば)で有る。
 食欲も排便や排尿も通常で良く寝、麻袋担架に吊るしている最中でも鼾(いびき)をかいて寝てしまう。






マルスの途中経過(2008年1月更新)

 マルスには4~5年前からてんかんの発作が有り、持病となっていました。薬は少な目を与え今日に至ります。薬は抗てんかん剤で極度の興奮を抑える作用が有る為に、マルスの性質は増してや大人しくなりました。そんな性質でしたので、アニマルセラピー犬として登用していました。大人しくご老人と向き合い、癒しました。マルスのおかげで安心して施設を訪問することが出来、アニマルセラピーの様々な方法を識る事になりました。

 ペットとしては15年の生命は長すぎるように思いますが、その灯火は僅かと成りました。整腸剤やビタミンの効果もあるでしょう。然し、日夜の介護に勝るものは有りません。褥瘡(じょくそう)も癒え、特別食も手で与え、腹が満たされ今は静かに揺り籠で眠っています。




マルスの揺り籠(2008年4月更新)

 一本吊りとは言っても、漁師が釣竿一本でカツオを何匹も釣り上げるのとは大違い。マルスの介護話の続報です。
 現在のマルスは状態が安定していて、良く食べ、排泄もきちんとしています。日光浴も、のどかな春の日差しを浴びて好好爺(こうこうや)のごとく寝ています。体重は日々減じて、何時お迎えが来てもおかしくないのですが、可愛らしい縫い包みの様な体で過ごしています。
 前回は担架のまま吊り下げましたが、マルスに歩きたい気持ちがあり、希望を叶えて、吊り下げる事にしました。左方向にグルグルと回るのでロープで止めてはありますが、左右にブラブラと歩を運び、良い運動になっている様です。
 朝昼晩と深夜の介護は大変な仕事ですが、皆頑張ってやっています。感謝感謝感謝の気持ちをマルスに代わって伝えます。






15才7ヶ月(2008年5月更新)

 1992年の10月11日にゴールデンレトリバーのマルスは産まれました。母犬はスカイ、父犬はブリーダー犬で、確か11匹兄弟でした。逆さ睫毛が有り、手術をしたので弊園に残ることになりました。性格は温しく良い犬でしたので、後にアニマルセラピーの訪問犬として愛され活躍しました。
 老齢になり、改めて年を数えてみましたら15才7ヶ月という、大型犬種にしては珍しく長寿なのに驚きました。日夜、社員の介護の手でマッサージ後に寝返りを打たせ、体位を変えました。立位の担架吊りは足を踏ん張る事に依る見事な効果をみせました。餌も老犬用ドッグフード、ドッグ缶、野菜スープ、ミカンのおやつと、今は山羊乳200ccのメニューで長寿更新中です。




その後のマルス(2008年11月更新)

 今年の4,5月で紹介(前述)致しました、ゴールデンレトリバーのマルスの続報です。

 1992年10月11日に産まれましたマルスは16歳の誕生日を社員(飼育員)の手厚い介護の中迎えました。もうすでに立つ事は出来なくて寝たきりです。餌も食べたり食べなかったり牛乳やヨーグルト、ミカン等も与えていますが、見る見る間に痩せ細り、体重は半減し凡そ15kg位しか有りません。1日、朝7時から夜10時までの10回、吊り下げ、横臥(左右)にマッサージ、生理食塩水500mlの点滴、そして給餌をしてました。飼育の努力は並々ならぬもので、社員は一言も苦情を呈せず勤め上げていまして・・・
 
 ・・と、此処まで書いたところ、今日(11月12日)の昼食後にアルバイトの岩鍛治君が飼育に下りた所、静かに息を引き取っていたのでした。こうなるであろうと想像はしていました。全身のエネルギーを総て使い果たし、ローソクの最後の灯が消えうる様な死でした。

 マルスに学びました。介護の辛さ苦しさ、手を掛ければ介護が充実する事、等々、現代の若者が薄志弱行であるとすれば、飼育や介護は成り立たないでしょう。良き飼育員に恵まれてマルスは16年と1ヶ月の良き一生を終える事が出来ました。合掌・・・

百見(ひゃっけん)は一触(いっしょく)に如かず

 私達が動物飼育をするに当り、特に大切な考え方が有ります。これは弊園プチZOOの社員に対して入社当初の教育として私が話している事でご座居ます。

 良く世間では「百聞は一見に如かず」と言い、あれこれ話を聞くよりも自分の目で見て確かめる事の方が、はるかに良く理解できると言う意味で、英語では「Seaing is believing(見ることは信じる事である)」と言います。百聞とは同じ内容を百回聞くと言う事で有ります。百聞もしたら嫌になっちゃいます。ひょっとしたら耳に胼胝(たこ)が出来てしまうかもしれませんね。この胼胝は比喩で諷喩という表現方法なのですが、兎に角、話を聞いて貰えないならば、理解して貰えないのならば何の役にも立ちません。それならば見て貰おうじゃないか、と現場や実際を見て体験して貰うと、何も言わなくともたちまち解る、仮想と現実みたいな違いが有るんですね。
 
 「グリーンイグアナが産卵したよ!」
 「丸くてね、細長くて白いんだ。」
 「直径2.5㎝くらいで長さは4~5㎝が標準みたいで、小さいのも産んだんだ。」

 この報告で皆さんはグリーンイグアナの卵を想像出来ますか?頭の中で思い描いて仮想をしますが、下の写真をご覧になりますと「嗚呼、こんなんだったのか。」と思われるでしょう。これが最初の「百聞は一見に如かず」の一例です。それ程大切な諺ですが、弊園ではその諺を踏まえ発展させて、「百見は一触に如かず」と申します。

 グリーンイグアナの産み立て卵を眼にして拾い上げて手のひらに乗せてみると、濡れていた卵殻がまるで和菓子の饅頭の様な出立ちですが、見る見る間に乾いてきて艶々していた粘液が膜となり、そして卵殻に同化して行くのが数分で観察されます。その不思議と驚き、その経験が大切であり、飼育上の大切な宝となります。この経験・宝の蓄積が多ければ多いほど幸せになれます。

 「経験は知恵の娘」(プラトン)と申します。勉学し、学び得るのは知恵ですが、その知恵も机上論では説得力が不足します。そこで経験に基づいて得られた知恵・知識は重要で、物事を探求する上でとても大切な行為・考えなのです。飼育する事は科学する事だと私は考えております。家庭内で、学校で、実験室で、職場で、動物園や水族館で動物飼育をされていらっしゃる方はとても大勢いらっしゃると思いますが、「百見は一触に如かず」を実行され、より深い動物飼育技術の、そして動物文化の造詣を得られます事を望んでおります。そして、多くの動物達が良い環境の下で暮らせる事が大切で、その環境を与えられる飼育者になって下さい。弊園の大動物好き飼育係は幾多の仕事を抱え、日夜励んで居ります。心根の優しい人間は素敵です。

昨今の動物映像

◎過去の機関紙(第5号・1993年10月15日発行)より掲載しました。◎

 私は幼少の頃から動物が大好きで、よく捕らえては箱などに入れて結局は死なせてしまうのだが、飼っていた。その内、他にも様々な動物がいることに気が付き、見識らぬ獣・鳥等に興味を持つようになった。

 本は殆ど買わなかったが、早くからテレビがあったので、兄弟を説得してはチャンネル権を取っていた。そのテレビに写し出される動物の数々や生活は、殆ど、全くと言って良い程疑いを持たず、其のまま吸収して知識としていた。

 学生になって、ある時「野生のエルザ」という映画を見る機会があり、その頃は野鳥について活動していたので、さしてアフリカのライオンは見ようとは思ってもいなかったのだが、映画館に入って驚いた。主役のエルザが何頭も、確か4~5頭だったと思うが、出てくるのである。ライオンが違う度にとてもがっかりさせられ、この事に周りの客たちは気が付かないのだろうと考えた。

 其の後、数年経ってサファリパーク型の動物園に勤め、取材やら番組製作のお手伝いをよく仕事としてこなしたが、実に考えさせられたのは、其の映像の一部分はやらせであり、また、後に編集され都合の良い様に収録されていることであった。

 最近は、テレビで動物番組を放映する局が多い。中でも、毎週そのシリーズを世界中の通信員や取材班から送られてくる膨大な記録を、今の「生物多様性」をテーマに、茶の間に紹介している番組なのだが、これがまた、無理のある編集が多いのである。

 野生動物の生態を子供から成人までに映像で紹介するのは、とても良い手段とは考えられるが、過日批判のあったアジア紀行番組等々の様に、動物番組でも同等の高い認識が必要だと思う。確かに動物の場合は取材側の意思通りには殆ど動いてはくれないし、近付けば逃げてしまうのは彼らの本能である。だからと言って、都合の良い様にフィルムをツギハギにして見せ、ナレーションでつじつまを合わせるのは以ての外である。

 この様に、客観性の、時として無い映像を、学生たちは「本当だ」と思い込み観ているのだから困ったもので、授業の中では、これは製作意図のある内容なので、客観的な判断で観ること、ナレーションを消して観ることを勧めている。
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